Garage a Trois - Skerik率いる音楽界の大物たち

Garage a Troisと聞いてまず初めに私が思い浮かべるのは、大物ぞろいのオールスターバンドということだ。でも、それじゃ余りにも舐めた評価かもしれない。このバンドは、サックスのSkerik、ギターの名手Charlie Hunter、ドラマーのStanton Mooreの3人によるトリオとして始まり、後にヴィブラフォンのMike Dillonを迎え入れ、タイトな構成で脂の乗ったファンクの野獣へと成長した。後にCharlie Hunterはグループを離れたが、その代わりに今もっとも忙しいキーボードプレイヤーの1人であるMarco Beneventoが2007に正式メンバーとして加入している。 Beneventoが加入しほどなくして、彼らは作曲面によりフォーカスを当て始めた。その成果は、発売されたばかりの新作Power Patriotで確認することが出来るだろう。 Glide誌のJoe Adlerが、Skerikとのインタビューの機会を得た。バンドの歴史、その道のり、そしてBenevento加入について聞いた。
 
 
Skerikのことを良く知らない読者に、今までの音楽的な背景を教えてくれる? いつどんなひらめきで音楽を始めたの?
そうだな、父が音楽に入れ込んでたんだ。特にジャズとクラシックのすごいファンだった。で、母はピアノを弾いたし、聖歌隊で歌ったりなんかもしてた。だから音楽は生活の一部だった。「これを演奏するか死ぬかだ」みたいな、狂気の押しつけみたいなものは無かったよ。音楽を演奏すると、周りが喜んでくれたんだ。というか音楽だけが、悪い意味じゃなく注意を引きつける唯一の方法だったかも(笑)。子供の頃って、親が話しかけてくるときは必ず説教くさかったりするでしょ。しかも俺はかなり悪い子だったんだよな。
 
 
じゃあ、音楽がSkerikを、悪の道から救ったって感じかな?
いやいや、そんなことはないよ。ただ音楽は、自分がやっても周りの人の機嫌を損ねなかったんだ。それは良いことでしょ。で、ひとつ覚えさ。
 
 
Garage a Troisについて聞きます。新作を何度か聴いたけど、とてもダイナミックなアルバムだよね。どんなプロセスでレコーディングされたの? バンドみんなで作曲したの?
まず今どき、例えば良いミュージシャン達と演奏したいとするじゃない、スキルの高い人たちと。普通に考えてもこういうタイプのミュージシャンは他のミュージシャンやなんかから引っ張りだこってことが多い。だから最近じゃ究極の資源は時間なんだよね本当に。それが一番、お金を喰うところ。手に入るお金はもっぱら、時間のために、もしくは時間を節約する方法、それか時間を生み出すために使ってるよ。このバンドは特にひどい、いわば時間の犠牲者だよ。だって4人で集まれる時間がほとんど無いんだから。

Stantonは、Galacticと彼のトリオですごく忙しいし,ソロのClinicのプロジェクトもある。Marcoも彼自身のトリオでいろんなことが進行中だし、それにBenevento/Russo Doもある。マイクはLes ClaypoolやAni Difranco、Go Go Jungle、Dead Kenny G'sなどなどとプレイしてて、で俺は今のところ自分のプロジェクトに取り組んでる。とにかく皆を集めるのが大変なんだ。だからこのバンドにとって重要なのは、いや他のバンドにとってもだけど、それぞれの時間で作曲して、曲の断片を持って集まることなんだ。スタジオに入る時なんかにね。スタジオを予約したら、皆がそれぞれいくつか曲の切れ端を持って来て、あとは実際に演奏して、どうやったらバンド全体で一番良く聴こえるかをアレンジしていくんだ。あとは微調整。かなりタイトな状況だけど、みんなすごいんだ。それにスタントンは有能なスタジオドラマーで、どんな曲を持っていったって瞬時に覚えられるんだよ。すごい複雑なリズムの転調(metric modulation)とか、とんでもないひねりが入ってるような曲でもね。そんなのだって彼はさらっとこなすんだ。ちなみに作曲はMarco、Mike、そして俺がほとんどをしていって、スタジオで一気に全てをプレイしたんだ。
 
 
アルバム中どの曲を、Skerikが書いた?
Power Patriotは俺のだな。Mike Dがタイトルを考えてくれたんだ! あと、Purgatoryも俺のだ。あと、いくつか断片的に書いたのはあるよ、ちょっとしたメロディーをいろんなところで。
 
 
Fragileは誰が書いた? Marcoっぽいな、って気がするんだけど。パワフルな曲だよね。
そう、Marcoが書いた曲だよ。彼のアンセムの1つ。彼はそういう、歌入りのヤバい曲を書くんだよ。MarcoとMikeが、パワルフなハーモニーをこのアルバムに持ち込んだね。2人ともそれぞれのバンドで最近たくさん作曲していて、面白いコード進行をかなり取り入れてるのと、ハーモニーに対してかっこいいメロディーを書いてる。ほんとに彼らがこういう音楽を持ち寄ってくれてラッキーだったよ。すごく面白いからね。だってアルバム全体で俺のソロは短いのが1個だけ。あとは相づちをひと言、ふた言みたいな感じであちらこちらで吹いてるくらいだな。このアルバムは、ソロ中心では全然無いんだ。焦点はインプロビゼーションでは無い。これは、作曲に関するアルバムなんだ。台本があって、アレンジも決められているっていう風に、しっかり作曲されてるんだ。
 
 
Charlie Hunterが参加した過去2作のアルバムと今作の大きな違いは何だと思う?
その2作は、もっと開放的だった。収録されてた曲は開放的で、それぞれがインプロビゼーションのための出発点だったんだ。もしくはなんていうか伝統的な、盛り上がるヤマ場があって、ソロがあって、またがヤマ場があるようなスタイルだった。その一方で新作が、曲の頭から終わりまで完全にあらかじめ全部書かれてアレンジもされていたのに対してね。2、3曲はいわゆるソロの入った曲があるけど、それで全部。その、ソロのある曲ってのは、ほんとにマジでイカれてるんだ、、、Computer Crimesって聴いた? すごく良い曲で、エンディングがすごい美しいんだ。というかね、俺らはみんなこのレコードが完成したことがすごく嬉しいんだ。リリースされるまでにこんなに時間がかかってしまって、本当にイライラしてたから。
 
 
すごく良い曲だよね。アルバムのレコーディングから1年半くらいたってしまってるんだっけ?
そう。ほんとにツイてなくてさ。いろいろ、うまく行かなかったんだ。でもやっと、なんとかまとまったね。ほんと、完成して嬉しいよ。なにしろ皆に聴いてみて欲しい。良い曲が揃ったアルバムなんだよ。特に最近リリースされてる、Grizzly Bearの新作とかDeerhoofとかそういうバンドや、Queen of The Stone Ageとかもそうだけど、作曲とアレンジ面で異常なくらいの作り込み(hyper compositional)がされてるアルバムが出てきてる時っていうタイミングもね。俺らの新作が、この辺のアルバムの仲間になるような感じで世に出るってのはほんと気分が良いよ。
 
 
確かに最初に聴いたとき、作曲面が突出してる感じがしました。初めはちょっと難しいなっていう感じも。特に今までの作品を知ってたから。でも方向性に変化があったんだなって分かってからは、その攻めのスタイルをすごく気に入ってしまいました。では聞きます。思い切って教えて欲しいんだけど、バンドにとってのMarcoとCharlieの違いは何?
人間同士のことだから、いつだって誰かがグループに入ってきたら、全てが変わる。特にCharlieとMarcoは全くタイプの違う人間でありミュージシャンだ。でも音楽的には共通する点が多いんだ。どちらとも、ベース音を使った全体を支える基盤と、ハーモーニーとメロディーという要素を同時に担当してるから。それってすごい責任だし、過去60年間に脈々と、特にハモンドオルガン奏者が追求してきた伝統だよね。
 
 
つまり、Charlieの代わりに他のギタープレイヤーを迎え入れることができなかったのは、彼の役割を埋めることができるギタープレイヤーが見つからなかったから?
違う、違う、そうじゃないよ。つまりさ、俺がプレイするようなバンドは、楽器の編成じゃなくてメンバーの個性が特徴なんだ。例えばLes Claypoolは、俺を雇ったときサックス奏者を探してたわけじゃない。俺がやってたことを気に入って雇ったんだ。サックス奏者を雇おうとしてたんじゃ全くない。彼が求めていたのは、正しい姿勢、それから彼のやってることをバックアップする適切な色合いだ。だから俺も、誰かがバグパイプを演奏しようが、ファゴットだろうが、関係ないんだ。もし誰かが、音楽に対する筋の通った視点と、強い説得力のある個性を持ってたら、俺はその人とプレイしたいんだ。Marcoはもともと良い友達で、ミュージシャンとしても最高。だから、俺らにとって当然の選択だったわけだ。とてもパワフルなプレイヤーで、かつ良い友達だったCharlieのような人の後に、一緒にプレイする相手としてもね。
 
 
11月から始まる今回のツアーにあたって、新しいアルバムの曲や、昔の曲を覚えなおす時間は取るの?
ほら、この辺の曲ってずいぶん前にレコーディングされてるわけ。もう1年半くらい演奏して来てるんだ。だからその音については裏も表も知り尽くしてるんだよ。
 
新しい曲はあるのかな?
いつだって俺らは新しい曲をやるんだけどさ、ショー自体たまにしかやらないから、お客さんはどれが新しい曲なのか分からないんだよね(笑)。ここ2、3年は、年に3回とか5回とかしかライブをやってない。しかもそのほとんどがニューオリンズのジャズフェスティバルだった。だから本当にすごいことになると思う。全くの新しいコンセプトで詰めに詰められた音を2、3時間、ライブでお客さんにがっつり浴びてもらうんだから。俺らはこの音楽を隅から隅まで知ってるし、かなり複雑な音ではあるけどめちゃくちゃロックするよ、オーディエンスの目の前でね。この4人の組み合わせなら、何をどうすべきか今ならはっきり分かるんだ。自分たちにも何がしたいのか分かるまで2、3年かかったけど、それから作曲し始めてこのアルバムが出来て、今ではその曲を1年半くらいプレイしてて、今じゃその音楽が俺らバンドと完全に一体化してるんだ。変わり者揃いのこのバンドとね。
 
 
今でもジャージの上下で揃ってプレイするの?
いやいや。何年も前にCharlieとやってるときに止めたよ(笑)。あれはイカしてたよね。そういうコンセプトって良いと思うんだ。あれみたいな団結力のある演出は好きだな。たとえ簡単なものでもね。インストルメンタルミュージックをやるバンドってどうしても、気取った感じになりがちでしょ。真面目くさっちゃってさ。コスチュームがあることで、「ほらただの音楽だよ、ライブを楽しもうよ」って気分に戻れるんだ。俺らは、99%が野郎のオーディエンスに向けて度肝抜かせてやるぜ、って意気込んでる超絶テクのフュージョンバンドじゃないし! そういう音楽も聴いて育ってきたけど、ライブだと退屈だよね。そんなの誰も聴かなくて良いよ。
 
 
前に1度Garage a Troisを見た時、君たちはジャージを着てステージでぐるぐる走競争してたよね。しかも楽器を手に取る前に。お客はすっかり夢中になって、君たちが最初の音を出す前に君たちの味方についてました。あれはパーティでしたね。ちょっとした出来事でした
でもね今のところ、Marcoと一緒にコスチュームやユニフォームを切る着るべきだな、とは思ってないんだ。なぜならステージの俺らを見れば、楽しんでるってのが一目瞭然だからね。Marcoはとてもポジティブな人物で、ライブで演奏するのが大好き、だからいつも笑ってるし、おどけてる。だから誰もショー中に「ジャズっぽい表情」をしちゃったりはしないんだ。
 
 
ひとつ提案させてもらえるとしたら、昔のヨーロッパみたいな白いかつらをかぶってアメリカ軍のプロパガンダポスターのパロディをするのはどうだろう。American Patriotと、Power Patriotをかけて。
(訳者注:参照画像
(大笑い)それは思いつかなかったよ。Power Patriotってタイトルは、マイクDのアイデアだったんだよ。彼はテキサスで育って、父親が牧場を持っていたんだ。そこの雄牛がいつも出かけてってはその辺の牛全部をファックしちゃってさ、それでPatriotって名前が付けられたんだ。で、マイクがPowerって言葉を付け加えたんだと思う。何せその牛は、、、性的にパワフルだったからね。というわけで全くアホらしい理由なんだ。俺らも雄牛の格好か何かすれば良いかもね、闘牛士とか。18世紀のアメリカン闘牛士ってわけ。ほんとにそういう人がいたのかは知らないけど。ショーに招くのもいいかも!
 
 
他には何が進行中なの? Syncopated Taint Septetは続行中?
次の春にGATでライブアルバムを出そうかなと思ってるんだ。だからSeptetはそんなに活動してないね。でもDead Kenny G'sのレコードが2、3週間前に出たばかりだ。これも本当に嬉しい。Dead Kenny G'sは西海岸のツアーを終えたばかりで、12月にもちょっとショーをやる。こっちも好調だね。西海岸ツアーは本当に良かったんだよ。良い曲もいろいろ書いてるしね。インプロビゼーション寄りのバンドで、お手本としてArt Ensemble of Chicagoを想定しているような感じだよ。イカれた曲作りと、既成曲がいつ飛び込んで来るか分からない先の読めないインプロがたっぷりなんだ。
 
 
私もDead Kenny G'sのライブ音源をいくつか聴きましたが、すごく良かったです。
わーありがとう。最近のショーをもし聴いてくれたとしたら、それが正に今のDead Kenny G'sの境地を表しているはずだよ。
 
 
Les Claypoolとは何か進んでる?
彼とは今年はやってないな。でもMike Dは今もやってるはずだけど。
 
 
つい最近Mike DをAni Difrancoのショーで見たんです。あの環境で彼を見るのはとても面白かった。もっとアバンギャルドな彼のいつもの仕事とはかなり違うので。
彼はすごく楽しんでるよ。それにAniは本当にクールなんだ。俺らみんなの良い友達でもある。実はGATのニューアルバムをレコーディングしてるときも彼女はスタジオにいたんだ。彼女の夫であるMike Napolitanoがエンジニアをしてたからね。彼女の作るラザニアにちなんで付けられた曲名もあったんだよ。でも後で変更されちゃったけど。彼女のラザニアは素晴らしいんだ!
 
 
元のインタビューはこちら
 
 
 

Garage a Troisのインタビューを、勝手に翻訳してみました。Skerik、言葉で話しても意外と饒舌なんですね。そして思ったよりずっと「まとも」! というか私が勝手に超エキセントリックなキャラクターを想像してたみたいです。こんな↑写真ばかり見てきたからでしょうか。とにかくいつも「目ヂカラ」が強くて、写真からも伝わる「ただ者じゃない」感。あんまりインプロの無いSkerikってどんなだろう。4人で音圧すごそうだな。フィジカルに浴びる感が楽しめそう。しかと、目撃しようじゃないですか。

翻訳: Sorane Yamahira
 
 
 
 
     
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